ウイルスは単独では増殖することができず、宿主細胞の機能を利用して子孫粒子を産生して増殖します。ヒト体内における増殖は、多種多様な細胞で構成される各種臓器の特性やヒト免疫系との相互作用にも大きく影響を受けます。さらにパンデミックの教訓として、多様なウイルスに対する研究の重要性も認識されました。本事業では、コロナウイルス、ヒト T 細胞白血病ウイルス(HTLV)、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、ボルナウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、RSウイルス、デングウイルスなど、分類学的にも増殖機構も異なる多様なウイルスを研究対象とします。各種臓器を再現するオルガノイド技術、ヒト免疫系解析技術、多様なウイルスに対応するクライオ電子顕微鏡構造解析など京都大学が先導する先端技術を活用し、ウイルス感染症の克服に向けた国際共同研究を実施いたします。
免疫原性や遺伝子治療、創薬に関わる産業応用研究において先行する欧米との国際共同研究やネットワークの構築を通じ、本邦における基礎研究と産業応用研究をシームレスに繋ぎます。このノウハウの蓄積が、次世代のウイルス研究と国際感覚に優れた若手研究者を育成し、基礎的な病原性研究に加え産業応用研究を加速させることを可能にします。多様なウイルスに関する基礎研究と産業応用研究を原子レベルから組織・個体レベルまで多次元に展開することで、ウイルス感染現象を統合的に理解し、これらの成果を基軸とした新たな研究領域の創出・産業応用研究を推進いたします。